インターネットが普及しはじめた頃、企業にとってWebサイトは「眠らない営業マンだ」という売り文句が流行りました。
人間の営業マンであれば仕事時間のほかに休息・睡眠の必要があるが、Webサイトは一度作ってしまえば、24時間ずっと集客のために働いてくれる。まさに眠らない営業マンだ……というわけです。
当時からその言い回しには相当な違和感があったのですが、さまざまなネット戦略の概念がある現在においては、さらに違和感のある言葉です。
まさか、今でもそんな事を言っている人はいないだろうと思って検索してみると、結構な数が見つかってしてしまいました。どうやら現在でも「ホームページは眠らない営業マン」だと考えている方が多いようです。
考えてみると、たしかにWeb制作を発注してくるお客さんの中には、似たような感覚の方がいらっしゃるように思います。特に、オリジナルのECサイト(ショッピングサイト)の構築を依頼されるお客さんに多い。
ECサイトを作って商品を並べておけば、簡単に売上げが上がるだろうと考えているのです。
そういう場合には、もちろん事前に「そんなに簡単なものではないですよ」とは伝えるのですが、なかなか納得してくれない。
結局、強い要望でECサイトを立ち上げはするものの、ほとんど売れずに放置されてしまうのが関の山です。
「どうすれば売れるようになりますか?」と、今度はWebのコンサルティングの依頼として、ざっくりとした相談を受けたりはするものの、正直言って、まったく売れていないECサイトのWebコンサルティングは不可能です。
なぜなら、それは「どうすればビジネスがうまく行きますか?」という問いと同じなので、Webサイト運営のテリトリーを超えた戦略にならざるを得ないからです。
商品のニーズは?
販売ターゲットは?
競合他社との優位性は?
プロモーションの費用は?
売上げ目標は…?
少なくとも、それぐらいの具体性がないと、なんともアドバイスのしようがありません。
まぁ、それがあっても難しい面はあるのですが、お客さんの側に具体性があれば、こちらもずっとアドバイスしやすくなりますし、その成功角度も高まります。
たとえば、どのターゲットに商品ニーズがあるかだけでもわかれば、商品の見せ方や、ターゲットに響きやすいキーワードでのSEO、広告戦略も明確になり、事後に戦略の有効性を検証し、さらに高角度の戦略の立案に役立てることもできます。
というか、そういう過程でしか売上げを上げることなど、できるはずがありません。
「ECサイトと言えども、気にかけるべきことは通常の店舗運営と変わらない」くらいの感覚えないと、商品を売ることなんてできないのです。
ECサイトは物販というわかりやすい例ではありますが、通常のWebサイトであっても、そこで何らかの成果を得ようと思えば、結局は同じことなのです。
そういう現実がありながら、今でも「Webサイトは眠らない営業マン」とか言う空想のたとえ話は、そろそろ完全に終わらせた方が良いと思います。
今でも本気でそう考えている人がいるとしたら、実際にWebサイトを運営したことがないか、したことがあっても真剣に取り組んでこなかったとしか思えません。
インターネットを介しているとは言え、発信する側も、受け取る側も人間です。
その大前提は、忘れないようにしておきたいものです。