夜間飛行
髪と爪を切りなさい
どうせまた伸びてくるのだから
わたしが生きている意味を
そのひとことがすべて言い尽くしてしまう
手のひらの体温が夜に奪われても
身体の中心で駆動するものが
ふたたび手のひらに
体温をもどしてくれるように
その繰り返しが
正しく生きている証拠であるように
わたしはあの時
産まれてはじめて夢をもったのだ
落として粉々に割れたものが
どうかあの人を傷つけませんように
皮膚を裂く
存在感のない鋭さが
あの人を台無しにしませんように
あなたは今夜
髪と爪と切るのでしょうか
夢をもちましたか
手のひらに体温はありますか
傷つけられていませんか
わたしを覚えてはいませんか
そうでなければ
そうならなければ
血と骨を切りなさい
どうせまた生まれてくるのだから