訂正の上、謹んでお詫び申し上げます。
大阪、梅田にほど近く、下町情緒溢れる街、十三(じゅうそう)。
この十三で営業を続けていた銭湯「寿湯」が本日2016年11月29日を以って廃業されました。
昔ながらの美しい浴室を保ちながら、ボイラーや配管など、お客さんの目には見えない、それでいて銭湯の心臓部とも言える設備の不調により廃業のご決断です。
廃業前日の昨夜、お別れの入浴のために、寿湯さんを訪問しました。
すでに内部設備を運び出す日取りも決まっているとのことで、二度と寿湯の湯船を楽しむことは叶いませんが、十三に美しい銭湯があったことを記録として、ブログの記事にしたいと思います。
十三駅から徒歩15分。商店街を抜けた先にある銭湯。
ここが寿湯です。
下町の夜に浮かび上がるように暖簾がゆれています。
入り口の上に掲げられた屋号は、小さなタイルを組み合わせて作られています。
この細かく丁寧な仕事が、寿湯を手がけた大工・職人さんの技術の高さを物語っています。
のれんをくぐった先にある下足室。
ここから男湯・女湯に分かれるのは、大阪に多い作りです。
扉のむこうには番台の受付があり、愛想の良い女将さんが座っています。
廃業前日になってもいつもと変わらず、明るく、よく笑う女将さんです。
この記事内の写真も、快く撮影を許可していただきました
男性側の脱衣所です。
少しレトロな銭湯であればどこでも見かけるような風景ですが……。
天井は「折り上げ格天井(おりあげ・ごうてんじょう)」と呼ばれる豪華な作りです。銭湯では主に、東京にある宮造りの銭湯によく見られますが、大阪ではそれほど多くありません。
長い蛍光灯を斜めに挿した室内灯も、めずらしい作りです。
男湯の全景です。
お湯の種類は、深浴槽・浅浴槽・電気・ジェット・薬草風呂です。
また、石畳とタイルを組み合わせた床は、かなり古い銭湯でしか見ることができません。
寿湯は、懐かしさを感じる古さ(レトロさ)と、誰にでも入りやすい気軽さを兼ね備えていました。
浴室奥に見える滝は見事なタイル絵です。
色の違う小さなタイルを、ドット絵のように組み合わせて迫力のある風景を作り上げています。
浅浴槽の花柄タイルも素敵です。
これも、色の違うタイルを並べて作られたものです。
浴室内はしんと静かで、入浴中は、女湯から姉妹であろう幼い女の子たちの歌声が響いていました。
ボイラーが最後の力を振り絞って沸かすお湯は、少しぬるめです。
ただ、ふとした瞬間に、湯船の吹き出し口から熱いお湯の吹き出しを感じると、まだまだ寿湯は頑張れるのではないか……と想像してしまいます。
寿湯は、廃業の告知を脱衣所でしか案内していませんでした。
もしかすると、近隣の方でも寿湯の廃業を最後まで知らなかったかもしれません。
おそらく女将さんの様々な想いがあってのことではないかと思います。
寿湯が廃業を決断されたように、元気に営業を続けていた銭湯でも、設備の不調や様々な事情によって、急に廃業を余儀なくされてしまいます。
実際に、日本全体では一週間に一軒というスピードで銭湯の廃業が進んでいるとも言われています。
もし身近に銭湯があれば、自宅のお風呂と、銭湯のお風呂の違いを、肌で感じてみてはいかがでしょうか。
なぜ時代の流れに逆行しているように思える銭湯が、未だに多くの人に愛され、廃業を惜しまれているのかを、実感できるきっかけになるかも知れません。
最後に、寿湯さん、いままでお疲れさまでした。本当にありがとうございました。