奈良県の五條市で一軒だけ営業を続けている小さな銭湯があります。
それが、JR和歌山線 五条駅から徒歩10分の栄湯です。
商店街を抜けた先の奥まった空間に入口があるので、ぼんやりしていると見過ごしてしまいそう。
新しい建物と、文化遺産級の古い建物が混在している五條市。栄湯はこの場所で100年以上営業を続けています。
立派な屋号の看板。
営業時間になると、玄関に暖簾が掛けられます。
受付は昔ながらの番台式。
愛想の良い女将さんと、恰幅のいい旦那さんで経営されています。
脱衣所は今では滅多に見られない、一枚板に漢数字が浮き彫りされたもの。この脱衣ロッカーも文化遺産級です。今ではもう作ることすら出来るかどうかわかりません。
脱衣所の先には浴室が。
男湯の全景です。
湯種は浅浴槽、深浴槽、ジェット浴槽。
複雑な形をした湯船は、限られた浴室空間で色々な浴槽を快適に利用できるように工夫されたものです。
銭湯の構造は地域ごとに違いがあります。栄湯の湯船は大阪に多い石造りですが、大阪銭湯の特長である湯船まわりの腰掛けはありません。
お湯はキリッと熱めに沸かされています。
ちなみに、栄湯は昔ながらの薪沸かしです。
浴室内に湯気が気持ちよくただよっています。
ひときわ目を惹く、吹き出し口の像はこんな表情。
湯船には澄んだお湯が揺れています。綺麗なお湯が身も心もほっと落ち着かせてくれます。
男湯と女湯を隔てる壁の上には、レトロ風情のある魚たちが描かれています。
ささやかな彩りですが、実際に入浴するとこれだけで浴室が華やかに感じられます。
女湯は、男湯とは対照の造りになっています。
女湯にある吹き出し口の像はこんな表情。
午後の光が差し込む浴室は、独特の雰囲気に懐かしさと深い安堵感を感じます。
また、トイレは女湯の脱衣所にしかありません。昔の銭湯は近所の人が日常的に入りにくる場所だったので、あまりトイレ設備は必要なかったのかも知れません。
女将さんいわく、数十年前は1日400人の入浴客が訪れたとのこと。今では、そんなにお客さんが来る銭湯はほとんどありません。
店の裏にある窯場では、ご主人が薪を焚いています。
この熱によって、キリッとした熱いお湯が湯船に送られています。
大きな湯船の熱めのお湯で温もると、この寒い季節でもなかなか身体が冷えません。
機会があれば、五條市に唯一残った銭湯、栄湯の暖簾をくぐってみてはいかがでしょう。
奈良県五條市須恵 1-11-15
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TEL:0747-22-3169
【営業時間】16:00~20:00
【定休日】6の倍数日
※上記の情報は2016年11月現在のものです。変更される可能性もあります。
※この記事内の写真は許可を得て撮影しています。銭湯内での写真撮影は禁止です。